設定
mqvpn は INI と JSON の両方の設定ファイルに対応しています。ファイルの内容が { で始まる場合は JSON、それ以外は INI として解析されます。CLI 引数は設定ファイルの値を上書きします。
INI 形式
サーバー
# /etc/mqvpn/server.conf
[Interface]
Listen = 0.0.0.0:443
Subnet = 10.0.0.0/24
Subnet6 = 2001:db8:1::/112
# MTU = 1280
[TLS]
Cert = /etc/mqvpn/server.crt
Key = /etc/mqvpn/server.key
[Auth]
Key = mPyVpoQWcp/5gr404xvS19aRC03o0XS2mrb2tZJ1Ii4=
User = alice:<ALICE_PSK>
User = bob:<BOB_PSK>
[Multipath]
Scheduler = wlb
# CC = bbr2 # Congestion control (bbr2|bbr|cubic|none)クライアント
# /etc/mqvpn/client.conf
[Server]
Address = 203.0.113.1:443
[Auth]
Key = mPyVpoQWcp/5gr404xvS19aRC03o0XS2mrb2tZJ1Ii4=
[Interface]
TunName = mqvpn0
DNS = 1.1.1.1, 8.8.8.8
LogLevel = info
# MTU = 1280
[Multipath]
Scheduler = wlb
# CC = bbr2 # Congestion control (bbr2|bbr|cubic|none)
Path = eth0
Path = wlan0JSON 形式
JSON は構造化された設定管理や自動化ツールとの連携に便利です。
サーバー
{
"mode": "server",
"listen": "0.0.0.0:443",
"tun_name": "mqvpn0",
"log_level": "info",
"subnet": "10.0.0.0/24",
"subnet6": "2001:db8:1::/112",
"cert_file": "/etc/mqvpn/server.crt",
"key_file": "/etc/mqvpn/server.key",
"auth_key": "<YOUR_PSK_HERE>",
"users": [
{ "name": "alice", "key": "<ALICE_PSK>" },
{ "name": "bob", "key": "<BOB_PSK>" }
],
"max_clients": 64,
"scheduler": "wlb",
"cc": "bbr2",
"mtu": 1280
}クライアント
{
"mode": "client",
"server_addr": "203.0.113.1:443",
"tun_name": "mqvpn0",
"log_level": "info",
"auth_key": "<YOUR_PSK_HERE>",
"insecure": false,
"dns": ["1.1.1.1", "8.8.8.8"],
"kill_switch": false,
"reconnect": true,
"reconnect_interval": 5,
"scheduler": "wlb",
"cc": "bbr2",
"paths": ["eth0", "wlan0"],
"mtu": 1280
}マルチユーザー認証
サーバーでは複数のユーザーをそれぞれ個別の PSK で認証できます。JSON config の users 配列で設定するか、Control API を使って実行中にユーザーを管理できます。users 配列の各要素はオブジェクト形式({"name":"alice","key":"..."})または省略形の文字列("alice:key")のどちらでも指定可能です。
auth_key(グローバルキー)と users を両方設定した場合、クライアントはどちらでも認証可能です。名前付きユーザーのみに制限するには、auth_key を設定から削除してください。
Control API でユーザーを削除すると、そのユーザー名で認証された接続中のセッションも切断されます。
監視は per-user 鍵が必須
複数クライアントで auth_key(グローバル鍵)を共有しても VPN データプレーンは動作しますが、Control API と Prometheus exporter は user ラベルでクライアントを識別します。グローバル鍵で認証したセッションは user="(global)" として報告されるため、複数クライアントが同一ラベルに衝突して Prometheus のスクレイプ全体が破棄されます。複数クライアントを監視する場合は、各クライアントに users で個別エントリを作成するか、add_user で実行時に登録してください。
設定ファイルでの実行
sudo mqvpn --config /etc/mqvpn/server.conf
sudo mqvpn --config /etc/mqvpn/server.json設定リファレンス
[Server](クライアントのみ)
| キー | 説明 | デフォルト |
|---|---|---|
Address | サーバーアドレス(HOST:PORT、IPv6 は [2001:db8::1]:443 形式) | 必須 |
Insecure | TLS 証明書検証をスキップ | false |
[Interface]
| キー | 説明 | デフォルト |
|---|---|---|
Listen | リッスンアドレス(サーバーのみ) | 0.0.0.0:443 |
Subnet | クライアント IPv4 プール(サーバーのみ) | 10.0.0.0/24 |
Subnet6 | クライアント IPv6 プール(サーバーのみ) | — |
TunName | TUN デバイス名 | mqvpn0 |
DNS | DNS サーバー(カンマ区切り) | — |
LogLevel | ログレベル(debug、info、warn、error) | info |
KillSwitch | VPN 外への通信を遮断(クライアントのみ) | false |
Reconnect | 自動再接続を有効化(クライアントのみ) | true |
ReconnectInterval | 再接続の間隔(秒) | 5 |
MTU | TUN デバイスの MTU 上限(1280–9000)。ネゴシエーションで決まる MTU のほうが小さい場合はそちらが使われる。 | auto |
[TLS](サーバーのみ)
| キー | 説明 | デフォルト |
|---|---|---|
Cert | TLS 証明書パス(PEM) | 必須 |
Key | TLS 秘密鍵パス(PEM) | 必須 |
[Auth]
| キー | 説明 | デフォルト |
|---|---|---|
Key | 事前共有鍵(base64、mqvpn --genkey で生成) | User 未設定時は必須 |
User | ユーザー個別の PSK(NAME:KEY 形式、複数指定可) | — |
MaxClients | 最大同時接続クライアント数(サーバーのみ) | 64 |
[Multipath]
| キー | 説明 | デフォルト |
|---|---|---|
Scheduler | スケジューラアルゴリズム(minrtt, wlb, wlb_udp_pin, または backup_fec) | wlb |
CC | 輻輳制御アルゴリズム(bbr2, bbr, cubic, または none) | bbr2 |
Path | バインドするネットワークインターフェース(複数指定可) | デフォルトインターフェース |
スケジューラの詳細はマルチパスを参照してください。
backup_fecは実験的機能で、両ピアが mqvpn 0.4.0 以降かつ FEC ビルド (-DXQC_ENABLE_FEC=ON -DXQC_ENABLE_XOR=ON) を有効にしている必要があります。 詳細はマルチパスを参照。
CC = none(輻輳制御なし)は xquic を-DXQC_ENABLE_UNLIMITED=ONでビルドする必要があります。
MTU ガイドライン
デフォルト(auto)— 通常はそのままで OK
ほとんどの環境では MTU を設定する必要はありません。自動ネゴシエーションで決まる値(約 1382)は、標準的な Ethernet(1500)、PPPoE(1492)、モバイル回線でそのまま使えます。
MTU を明示的に設定すべきケース
| シナリオ | 推奨設定 |
|---|---|
| 標準的な Ethernet / モバイル | 設定不要(auto で約 1382) |
| クライアントとサーバーで MTU を揃えたい | 両側に MTU = 1280 を設定 |
| 多段トンネル構成(mqvpn → WG → 別トンネルなど) | 残りの MTU を計算し、1280 に近ければ明示指定 |
MTU を設定すると、min(設定値, ネゴシエーション値) が実際の TUN MTU になります。設定値がネゴシエーション値を超えている場合は warning ログが出力されます。
TIP
MTU にネゴシエーション値(約 1382)より大きい値を指定しても効果はありません。ネゴシエーション値が常に上限になります。
TUN MTU の算出方法
mqvpn は接続確立時に、QUIC DATAGRAM の Maximum Segment Size(MSS)をもとに TUN MTU を算出します。max_pkt_out_size がデフォルトの 1400 の場合、オーバーヘッドの内訳は以下のとおりです:
max_pkt_out_size 1400 bytes
− QUIC short header 13 bytes
− DATAGRAM frame header 3 bytes
− MASQUE datagram header 2 bytes
─────────
= TUN MTU 1382 bytesmqvpn トンネル内で別のトンネルを使う場合
mqvpn の上にさらに WireGuard や IPsec、GRE などを重ねると、その分だけ有効 MTU が小さくなります。内側プロトコルの最低 MTU 要件を満たしているか確認してください。
例:mqvpn の上で WireGuard を使う
mqvpn TUN MTU 1382 bytes
− WireGuard オーバーヘッド(IPv6) 80 bytes
─────────
= WireGuard 内側 MTU 1302 bytes
→ IPv6 最小 MTU(1280) ✓
→ QUIC/HTTP3 UDP ペイロード 1254 bytes > 1200 ✓制約一覧
| 制約 | 値 | 根拠 |
|---|---|---|
| config 下限 | 1280 | IPv6 最小 MTU(RFC 8200) |
| config 上限 | 9000 | ジャンボフレーム MTU |
| QUIC 最小 UDP ペイロード | 1200 | RFC 9000 §14(ハンドシェイク要件) |
| ネゴシエーション上限 | ~1382 | max_pkt_out_size(1400)から導出 |
Control API
稼働中のサーバーに対して、ローカル TCP ソケット経由で JSON コマンドを送ることで、再起動なしにユーザーの追加・削除などの管理操作が行えます。
有効化
sudo mqvpn --mode server ... --control-port 9090デフォルトでは 127.0.0.1 にバインドされます。認証機能はないため、信頼できるインターフェースのみにバインドしてください。
設定ファイルから有効化する
Control API は /etc/mqvpn/server.conf からも有効化できます:
[Control]
Listen = 127.0.0.1:9090JSON 設定の場合:
{
"control_listen": "127.0.0.1:9090"
}CLI フラグ(--control-port, --control-addr)は設定ファイルの値をフィールド単位で上書きします。--control-port 0 を指定すると、[Control] Listen が設定ファイルに書かれていても明示的に無効化できます。
コマンド
ユーザーの追加:
echo '{"cmd":"add_user","name":"carol","key":"carol-secret"}' | nc 127.0.0.1 9090ユーザーの削除:
echo '{"cmd":"remove_user","name":"carol"}' | nc 127.0.0.1 9090ユーザーを削除すると、そのユーザー名で認証された接続中のセッションも切断されます。
ユーザー一覧の取得:
echo '{"cmd":"list_users"}' | nc 127.0.0.1 9090統計情報の取得:
echo '{"cmd":"get_stats"}' | nc 127.0.0.1 9090詳細なステータスの取得(クライアント・パス単位):
echo '{"cmd":"get_status"}' | nc 127.0.0.1 9090整形された出力には組み込みの status コマンドも使えます:
mqvpn --status --control-port 9090すべてのコマンドは "ok" フィールドを含む JSON レスポンスを返します。各接続は 1 コマンドを処理するとサーバー側で切断されるため、コマンドごとに新しい接続を開いてください。
systemd
deb パッケージや install.sh でインストール済みの場合、systemd ユニットは自動的に配置されます。ソースからビルドした場合は手動でインストールします:
sudo cmake --install build --prefix /usr/localサーバー
install.sh を使った場合は /etc/mqvpn/server.conf が自動生成されています。手動で設定する場合はサンプルをコピーします:
sudo cp /etc/mqvpn/server.conf.example /etc/mqvpn/server.conf
sudo vi /etc/mqvpn/server.conf # 証明書パス、認証キーなどを編集
sudo systemctl enable --now mqvpn-serverクライアント(テンプレートユニット)
クライアントはテンプレートユニットを使用します。インスタンス名が設定ファイル名に対応します:
sudo cp /etc/mqvpn/client.conf.example /etc/mqvpn/client-home.conf
sudo vi /etc/mqvpn/client-home.conf # サーバーアドレス、認証キーなどを編集
sudo systemctl enable --now mqvpn-client@home
# → /etc/mqvpn/client-home.conf を読み込みますINFO
systemd ユニットは INI 形式の .conf ファイルを前提としています。サーバーユニットの NAT ヘルパースクリプトも INI を直接パースするため、標準ユニットのままでは JSON は使用できません。